墨美神®︎樋口鳳香のつれづれ

歌川派の墨絵師、墨美神®︎樋口鳳香のアートブログ。『墨美神®︎を描く講座』と『展覧会告知』を発信します

『同じ絵はつまらない』という話


先日は初めての画廊での展示ということもあって、

初めてのお客さまにもたくさんお会いすることができました。

SNSなどチェックされて来られるのか、

不思議と私は存じ上げぬとも、お客さまは私のことをご存知のようでした。

そこで印象深い話をいくつかすることがあったので

ひとつずつご紹介しますね。

まずは『同じ絵はつまらない』という話。




墨美神®︎きもの掛軸をご覧になって、


「6点が同じ作者なのは分かるけど、それぞれに違っていいね」


と仰ってくださったお客さま。

好みの作家の作品はいつくか購入して部屋に飾っていると仰っていましたが、

「同じ作家ばかり蒐集するのもいいけど、飽きてきちゃうんだよね。

人物画は特にね。いつも同じじゃ面白くないし、

◯◯さんの作品はどれも同じだからもう飾らなくなっちゃったよ。

作家さん(画風)が変わってくれるといいんだけどね」

とお話になっていました。

それを聞いた時、やはり、と思いました。

私もSNSを通じて、流行りの作家さんの作品など拝見することがあり、

同じような気持ちで眺めることがあります。

人気でよく売れているので、同じ作品のはずはないですが、同じにしか見えない。

ワンパターン、ということです。

それでも行列店の法則で

人気があれば、また次の人気を呼び、求められる内は価格も(ある程度までは)高騰する…

という連鎖でしょうか。

作家の立場としても、その画風で売れるなら、その画風ばかり描き続けるのは致し方なく。

画商に同じ画風を求められるから、とか

違う画風に変えて売れなくなるのが怖い、とか

理由はいくつかあると思います。



私の師匠(水野年方からの歌川派の系譜を汲む)がよく言っていたのは、

「若いうちは特に、常に新しい表現に挑戦しないと。いつも同じじゃ観る側も詰まらないよ」

という言葉です。

そのため私も一言に『水墨画で描く美人画』と言っても、毎回いろんな技法を取り入れて

発表のたびに新しい表現にチャレンジするように心掛けています。

慣れた職人仕事をするのでなく、

時間のかかる研究と挑戦の繰り返しの中で、走り続けているわけですが

そこまでやっていても、観る側は「樋口鳳香が描いた」とすぐに分かるようなので

どうやら人ひとりの振り幅には限界があるようです。



一処におさまらず挑戦を続けてきた巨匠といえば、まず思い浮かぶのがピカソでしょうか。

付き合う女性が変わるたび画風が変わるなんて言われるほど、

いろんな手法・技法で、画風を変えて描いていますが、

それでもピカソと分かるのは、その幅の広さは格別でも、やはり彼の振り幅の中にあるからでしょう。

北斎も然り、でしょうか。

二人とも多くの作品を残していますが、時代を越えて認知度と価格が昇るばかりなのは

常に変わり続けながら、長く走りきった作家だからでしょうか。




挑戦し続ける日々の中で、私が心の中のお守りにしている言葉があります。

立場によっていろんな受けとめ方があると思いますが…



『なにをやっても一定の振幅で収まってしまうのをふがいなく思わず、

むしろその窮屈さに可能性を見いだし、夢想をゆだねてみること。』

堀江敏幸『正弦曲線』より引用)




さあ、変わろう。自分を軸にこれからも変わっていこう。



皆さまどうぞこれからも研鑽に努めて参りますので、

墨美神®︎ともども樋口鳳香をよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

〈個展のご案内です〉


墨で描く、かぐわしき美神たち
【樋口鳳香・墨美神展】

会期:2/16(水)~2/22(火)
12:00~18:30 ※最終日は16:00閉場
会場:銀座画廊 美の起原
(銀座8丁目・リクルートビルの裏手です)





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