墨美神®︎樋口鳳香のつれづれ

歌川派の墨絵師、墨美神®︎樋口鳳香のアートブログ。『墨美神®︎を描く講座』と『展覧会告知』を発信します

7/26(月)から【ネオ ジャポネズリー II】


澄んだ青空に吸い込まれるように

ふと窓を開けたら凄まじい暑さでした。

どうやら夏がやって来たようです。



さて。

樋口鳳香は、7/26(月)から

銀座奥野ビル・ギャルリーラーにて『ネオ ジャポネズリー II』に参加します。

今回は『墨美神®』だけでなく夏に似合うモチーフもいくつか展開します。




きっと、これまで見たことのない樋口鳳香をお楽しみいただけると思います。

面白い展開になると思いますので、多くの方とその時を共有できたら嬉しいです。

一週間後にはオリンピックも開幕ですね。

どうぞ皆さま、熱中症にも注意されて

健やかな夏の日をお過ごしくださいませ。

 

 

 

 

 

 

 

 


『ネオ ジャポネズリー II』
ギャルリーラー(銀座奥野ビル6階)
7月26日(月)~31日(土)12:00~18:00  最終日17:00迄


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【100号を描く~水墨画の墨いろについて】


しばらく大きな作品と向き合っていました。

10月に東京都美術館で開催される『現水展』の作品です。

今回は私の所属する『現代水墨画協会』が

創立60年となる『第60回記念展』なので、ちょっと力が入りました。




100号サイズの墨美神®︎を創作するにあたっての手順ですが

私は、まずF100号の比率を6号ほどに縮尺して下絵を起こします。

そのサイズで構図、技法など合わせて、下絵の確認をします。

小下図(エスキース)と言っても水墨画なので、この時点でかなり本画に近いものです。

画廊で展示しても問題ないほど、ひとつの作品として完成しています。

今回は、まずその完成度の高いエスキースを3枚描きました。




その中の一番納得のいく1枚を元に100号サイズに下絵を起こし直し、

本画を描いていきます。




6号(幅30cm)と100号(幅130cm)、サイズがかなり違うので、本画の下絵で若干の構図の調整をします。

墨美神が6号の比率ほど大きくなりすぎないように気をつけたり、

その他のモチーフたちが細かくなりすぎないよう、100号に見合った大きさにするなど、いろいろあります。




100号実寸の下絵ができたら、いよいよ墨を入れていきます。

いつもの、墨と水だけの表現であれば100号であっても、2~3日ほどで仕上げます。

水墨画の場合、墨色の変化や、紙に滲み出す膠の化学的変化もありますので、

本来なら日を跨がずに、集中力を高めて紙が濡れている状態で完成まで導くのがベストです。




墨色は重ねるほどに汚れていきます。

篠田桃紅さんが言うように最初に入れた墨の線は、最後まで消えません。

いくら隠そうと思って筆を重ねても、汚れるだけです。

筆の中に作った調墨(グラデーション)を、

迷いなく一気呵成に和紙の繊維に絡めていくことが大切なのです。




しかし今回はマチエールを含め新しい技法をいくつか取り入れたので、

絵肌作りに時間をかけました。

生の和紙を活かした点は水墨画ならではの技法ですが、日本画よりの水墨画になりました。




100号という大きい作品を描くにあたって、

美しい墨の滲みを表現するために、私は刷毛でなく連筆を多用します。

刷毛よりも水分の含みがたっぷりになるので、長い時間枯れずに描けるからです。

墨美神は渇筆の枯れた表現より、筆に水をたっぷり含ませた潤いのある表現が合っています。

 

 

 

 


というわけで、今回主に使ったのが、この画像にある20連筆、と9連筆でした。

どんな風に使うかはパフォーマンス動画をご覧いただけたらなんとなくご理解いただけるかなと思います。

 

 


Youtube動画:墨美麗組ライブペイント・ダイジェスト版

 

 

 




さて。大作が手離れしたので気持ちも新たに次に進めます。

また時間に追いつかれそうです。頑張らないと!




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【2021年これまで、と、これから】


2021年も残り半年となりましたね。

しかし、7月入ってからずっと雨。

コロナ禍に重ねて、大雨による災害も起きて落ち着かない日々ですが、

皆さま健やかにお過ごしでしょうか?




この半年の間、私、樋口鳳香は新しい機会や出会いに恵まれ、

たいへん充実した日々を送ることができました。

応援してくださる皆さまのおかげと感謝しております。

現在は、

10月に東京都美術館で開催される『第60回記念 現水展』に出品する

100号サイズの創作に打ち込んでいます。

現代水墨画協会が創立して60年の節目となる記念展なので、いささか肩に力が入っています。

10月なんてまだまだ先と思われることでしょうが、

作品の締切はもう直ぐなんです。

それを納めたら、速やかに今月7/26から開催の企画展の制作に移ります。

どんな墨美神が出てくるのか今は自分の中でも未知なので、焦りと緊張と昂揚の中にいます。

今回も多くの方に喜んでいただけるように、

楽しみながら新しい墨美神の形を創り出したいと考えています。

ふたたび展示会場にてお会いできますよう。

皆さま、どうぞお体ご自愛されてお過ごしくださいませ。


 

 

 

 

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全国公募【現水展@東京都美術館】~7月締切・作品募集


毎秋、東京都美術館で開催される現代水墨画協会主催『現水展』

今年は第60回記念展となります。

『現水展』は全国公募です。

テーマは『新しい水墨画の創生』

応募作品は、伝統的な水墨画の技法に絞ったものではありません。

モチーフも自由、表現方法も自由です。

応募要項に記載された10号から120号までの規定サイズで、

主に墨を使っている平面作品であれば、どなたでも出品いただけます。

 

賞:文部科学大臣賞、現水展大賞、東京都知事賞、東京都議会議長賞、上野の森美術館賞など多数

 



出品受付は7/1~7/14です。

応募要項は公式ホームページでご覧になれます。

☆応募要項http://www.sumiart.jp/html/gensuiten.html

 

 


お問い合わせフォームか、お電話で連絡を入れれば、事務局から振込用紙も送付されます。

ぜひ、お気軽にお問い合わせくださいませ。

☆お問合わせフォームhttp://www.sumiart.jp/cgi/form.html




第60回記念 現水展
会期:10/7(木)~10/14(木)
会場:東京都美術館 1階 第1・2展示室
賞:文部科学大臣賞、現水展大賞、東京都知事賞、東京都議会議長賞、上野の森美術館賞、その他多数

 

 

 

画像は2018年現水展会場内にて墨美麗組(すみれぐみ)によるライブペイントパフォーマンス

 


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【太宰治と 桜桃忌と 墨美神と】


水無月

水がないと書くこの月に作家、太宰治玉川上水に入水した。

奇しくも太宰の遺体は彼自身の誕生日に見つかり

最後に書いた『桜桃』という短編から

この日を『桜桃忌』と呼ぶようになったそうである。

 

 




つい先ごろのこと。

ご縁があって、太宰治をイメージした企画展に誘われた。

創作にあたって、年初より太宰治の作品を読みあさり

時には皮肉たっぷりな毒気にあたって気力を失いながらも

物語に登場する女性たちのようにひたむきに純粋に向き合ってみた。

 



 



私が題材に選んだのは5作品。

以下、一部抜粋と合わせてご紹介します。



「革命も恋も、実はこの世で最もよくて、おいしい事で、あまりいい事だから、おとなのひとたちは意地わるく私たちに青い葡萄ぶどうだと嘘うそついて教えていたのに違いないと思うようになったのだ。私は確信したい。人間は恋と革命のために生れて来たのだ。」

の『斜陽』



「本能、という言葉につき当ると、泣いてみたくなる。本能の大きさ、私たちの意志では動かせない力、そんなことが、自分の時々のいろんなことから判って来ると、気が狂いそうな気持になる。」

「先生は、私の下着に、薔薇の花の刺繍のあることさえ、知らない。」

の『女生徒』



「夫の顎の下に、むらさき色の蛾が一匹へばりついていて、いいえ、蛾ではありません、結婚したばかりの頃、私にも、その、覚えがあったので、蛾の形のあざをちらと見て、はっとして、と同時に夫も、私に気づかれたのを知ったらしく、どぎまぎして、…」

の『おさん』



「縁側の明るみに出されて、恥ずかしいはだかの姿を、西に向け東に向け、さんざ、いじくり廻されても、かえって神様に祈るような静かな落ちついた気持になり、どんなに安心のことか。」

の『皮膚と心』


そして

母は少しまじめな顔になり、
「この、お乳とお乳のあいだに、……涙の谷、……」
 涙の谷。
 父は黙して、食事をつづけた。

の『桜桃』。

 

 



 



太宰治の心の底辺に、江戸時代の近松門左衛門が流れていたように、

まだ江戸が遠くない時代の空気が吹き込むように

今回、私は墨美神(私の描く水墨美人画の名称)を5幅、創作した。

5幅、つまり作品を掛軸の形に仕上げてみた。

伝統的なマニュアルどおりの掛軸でなく、

作品を着物地に描き、それに着物や帯を合わせていくように、

訪問着など贅沢な反物を重ねて、豪華でかつ現代的な掛軸を、手作業で仕上げてみた。



初めての試みに不安はつきものだが、

良い出会いは、新しいアイディアを生む。

人との出会いも然り。

そして真っ直ぐにひたむきに向き合っていれば、良い結果を生む。

太宰との出会いに感謝するこの半年だった。



墨美神と、樋口鳳香を支えてくださった方々に改めて深く感謝申し上げます。

 

 

 



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完売御礼【私の中の太宰治展】


美の起原で開催された御子柴大三 氏企画の【私の中の太宰治展】

6/12(土)つつがなく会期終了致しました。

素材である反物選びからこだわり抜いて自ら表装まで手掛けた『墨美神®︎きもの掛軸』

この度、まとまった数を並べた初の試みの展示でしたが

たいへん多くの方に関心を持っていただき、

有り難いことに完売と相成りました。

樋口鳳香の『墨美神®︎』とご縁を繋いでくださった方々に改めて深く御礼申し上げます。

そしてこの機会を繋いでくださった企画者の御子柴大三 氏、美の起原さんに感謝申し上げます。

ご一緒できた作家さんたちにも多くの刺激をもらいました。

幸せで充実した時間でした。ありがとうございました。




(以下余談です)

会期中、何度も「なぜ着物地に描くようになったのか」と訊かれました。

お着物を学び、着るようになって、知識が蓄えられてきた背景があるのはもちろんですが

水墨画を描くにあたってずっと愛用していた和紙の職人が技を引き継げないままリタイアされて

その紙が入手できなくったのもひとつの背景でした。

生(き)の地を空白として生かして描く水墨画にとって紙選びは創作において大きな比重をしめます。

水墨画にとって空白は何もない『無』ではなく、

そこに何かある『気配』であったり、『予兆』であったり、時空を越えた『記憶』であったりします。

そんなわけで代わりの紙を探さなくてはいけないと思っていた矢先に

着物との出会いがあったのです。



私が使っていた和紙が二度と入手できなくなったように

日本にはたくさんの伝統の技と、それに携わる職人がいますが、

何百年と続く長い伝統があっても、一度その灯を失ってしまうと取り戻す事がたいへん難しくなります。

和紙を漉くのに不可欠なトロロアオイの生産農家が止めて、

墨を作るのに不可欠な最後の膠職人がいなくなって、、、

社会が目先の生産性ばかりに目が眩んでいる間に、

たったひとつの歯車の重さに嘆く未来が待ち構えているように思えてなりません。

私のささやかな仕事で『日本の伝統』の灯に若干でも息を吹き込むきっかけとなれば、と思いつつ

日課墨美神で、日々創作に魂を捧げている次第です。



なにより皆様のご健勝とご多幸を祈りつつ

どうぞ今後とも墨美神®︎ともども樋口鳳香をよろしくお願い致します。




 

 

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本日最終日【私の中の太宰治展】


【私の中の太宰治展】

6/12(土)最終日です。

実際の展示は本日16:00までで終わりますが、

WEB販売の期間は実際の会期より少し長くなっています。

遠方で移動が難しい方も、作品をお求めただけます。


WEB展示期間:2021年6月9日(水)~6月23日(水)予定


https://銀座画廊.jp/dazai-osamu/



どうぞ何度で足を運んでください。お待ちしております。






【私の中の太宰治展】
会場:銀座画廊・美の起原 (銀座8丁目4-2 高木屋ビル1F)
6/12(土)まで開催・12:00~18:30(最終日16:00閉展)


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