展示のたびにいろんな方にご覧いただいて、
お話を聞かせていただけるのは、ありがたいことです。
人は自分の鏡となるので、作品がどう受け止められているかを理解できるからです。
なので、どんな質問でも気軽にして欲しいし、
求めている人には時間をかけて説明も尽くします。
が。
ただひとつ!
これは奇妙な質問だな〜と思うことがあります。
それは
『ドーサを塗るんですよね?』
という質問です。
よく聞かれることで、がっかりする言葉でもあります。
絵を全く知らない人は聞いて来ないポイントだから、余計にです。
私「たらし込み技法でもしない限り、塗りませんよ」
すると、「だってドーサを塗らないと滲むでしょ?」と返ってきます。
『滲んでこその水墨画じゃないですか。
にじまなかったら、下絵をなぞるだけの“ただの塗り絵“ですよ』
と思うのですが、
堂々と訊ねて来る絵画愛好家さん(だと思う方)が意外に多いことにビックリします。
推察するに、画廊を回っている中で若い日本画の作家に下地処理の話しなど聞いて、
相応な知識をもっている?からだと思いますが…。
残念に感じるのは、絵画愛好家さんであっても
水墨画の醍醐味を分かっている人が少ないという事実です。
まあ、水墨画人口の圧倒的数の少なさ、発信力の弱さも原因なんでしょうけど…。
ほーんと、もうお腹いっぱいってくらい展示のたびに
『ドーサ塗るんですよね!』って、知った顔で言う方が現れます。
私「塗りませんよ。墨が滲まなくなるじゃないですか」
「えーっ!ドーサ塗らないんですかぁっっ!それでこんなにキレイに描けるんですか〜!」
って大袈裟な人もいますが(笑)
…聞かれる私の方も、なんでそこにばかりこだわるのか驚きです。
具体的にお話すると、ドーサを塗ると水墨画で使う『青墨』は、黄色に寄って発色します。
それが何を意味するかと言うと『=滲まなくなる』という事なんです。
専門的な話になりますが、
水墨画は青墨を主に使います。
それには理由があります。
青墨とは松の煤を使った松煙墨を言います。
この煤は顕微鏡で見ると粒子が均一でない、大小あるのが特徴です。
その墨を軟水(←これ大事✨)で薄めることによって膠と粒子をバラけさせ、
それを生の和紙や布の繊維に、やわらかく染み込ませることによって、
大小の粒子が繊維の奥にランダムに染み込んでいきます。
和紙や布の複雑に入り組んだ繊維の中で、バラバラになった粒子。
そこに光が反射して可視化されるため、青墨の薄墨は立体感を宿すわけです。
『墨に五彩あり』とはそう言う意味もあるわけです。
それに反して、主に書道に使う茶墨(油煙墨)は煤の粒子が均一なため、
くっきりとした墨色が表現できるわけです。
和紙にドーサを塗ると、水墨画の生命線である『生の和紙』
(墨美神きもの掛軸の場合、布地も同じく)の呼吸を止めてしまいます。
繊維の深くまで耐水性のあるミョウバンの膜が張られて、質感が激変し、
青墨の大小の粒子は、奥行きのない平坦な表面を滑るしか術がなくなります。
……だから、和紙や布の繊維に広く絡みついて実現する、
複雑な光とのコラボレーションによる五彩の深みは失われてしまうんですよ。
……と、お伝えしたいのですが、
ドーサ信奉者さんたちの多くは次の画廊にとお忙しいようで話を深くする事がありません。
ですが、滲んだら困るでしょ?と言う方々も、
きっと横山大観の『生々流転』を見て、墨の美しい滲みに感動するんだろうし、
長谷川等伯の『松林図』の朦朧とした薄墨表現に心を動かしたりするのだと思うのですが…。
そうやって訊ねてくるのは西洋画とのハイブリッドを目指した日本画唯一主義に偏りがちな
明治維新後の美術教育にも問題ありかもしれず…で。
あれこれ半端に伝えても仕方がないので、
「滲むからこそ水墨画は美しいんですよ✨」
とだけお伝えしています✨
さて、四ツ谷三丁目近くのACTでは『春はやて』が、1/30(日)まで開催です。
会場は広々してディスタンスの取れるようになっています。
皆さまのお越しを墨美神®︎ともどもお待ちしておりますね✨
アートソムリエ山本冬彦氏 推薦作家による
【日本画グループ展 春はやて】
会期:1/25(火)~1/30(日)
11:00-19:00 ※最終日17:00まで
会場:#TheArtcomplexCenterofTokyo (#ACT)
・丸の内線「四谷三丁目」駅 出口1より徒歩7分
・JR総武線「信濃町」駅より徒歩7分
■作家紹介ページ:
https://www.gallerycomplex.com/sch.../ACT225/haruhayate.html
■ACTオンラインショップ:
https://gallerycomplex.shop-pro.jp/?mode=cate&cbid=2608702&csid=223
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